農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)が公表している研究を従来のグルテンフリー100%米粉パンは、増粘多糖類(ヒドロキシプロピルメチルセルロースやグアガムなど)を添加して気泡を保持するのが一般的でした。しかし、農研機構の研究では「身近な米麹を使った前発酵処理」によって、添加物を使わずに膨らみを約2倍に向上させる手法が開発されています。
研究成果の主なメカニズムとポイントは以下です。後にこれを自分なりのレシピにして米粉ベーグルを作ってみます。
1. 膨らみが向上するメカニズム
- 麹の酵素(プロテアーゼ)の働き 米粉・水・米麹(砕いたもの)を混ぜて45℃~55℃で5~15時間程度前発酵させます。 この前発酵中に米麹由来のたんぱく質分解酵素(プロテアーゼ)の活性が高まり、これがパン生地の膨らみ向上と強く相関していることが明らかになっています。
2. 適性のある米粉の条件
- アミロース含量:20%~25%程度 アミロース含量が15%以上で膨らみが良くなり、20~25%程度(高アミロース気味の品種)の米を使うと、膨らみと食感の両方が最も良好になります。今回は熊本県産ミズホチカラ使用です。
- 貯蔵タンパク質変異 グロブリン欠失系統の米を使用すると、麹特有の発酵臭が低減し、風味が向上します(低グルテリン性やグロブリン欠失があっても膨らみには影響しません)。
3. この技術のメリット
- 完全ノングルテン・無添加 増粘剤(増粘多糖類)や小麦グルテンを使用せず、米粉・米麹・水・イースト等の基本材料のみで、ふんわりとした米粉パンが作れます。
- 玄米粉パンへの応用 従来の玄米粉パンは特に膨らみにくい課題がありましたが、この麹前発酵の手法を用いることで、十分な体積と良好な風味が維持できるようになります。
関連研究・資料名
農研機構の成果情報として以下のタイトルで公開されています。
- 研究成果情報: 「米麹を用いた100%米粉パンの新たな製法技術」
- 普及・技術解説: 「米麹を使ってグルテンフリー米粉パンが作れます」(農研機構 作物研究所・稲研究領域)
米麹の分解酵素を活用して米粉の製パン性を引き出す、非常に実用的で画期的な研究成果です。
これを踏まえて「米麹の低温水和(オーバーナイト)」と「油脂の後入れ」をポイントにした米粉ベーグルのレシピを考えました。
目指すところは、「冷めても翌日もボソボソせず、引き(噛み応え)のある仕上がり」です。
@農研機構・米粉ベーグル(4個分)
本来のレシピは米粉食パンだったのですが、今回米粉ベーグルにアレンジしたいのでサイリウムを加えています。いつも作っている米粉ベーグルのボリュームアップと食感をよりふわっとさせたいのが目指すところです。
1. 材料
- 【前日仕込み(米麹ペースト)】
- 米粉(ミズホチカラ製パン用推奨):200g
- ぬるま湯(約35〜40℃):170g
- 乾燥米麹:10g(約5%)
- 全部の材料をブレンダーで1~2分撹拌します。ラップをして冷蔵庫で12時間寝かせる。
- 【翌朝追加(本仕込み)】冷蔵庫から出して室温で30分復温してから
- ドライイースト:3g
- きび砂糖(またはお好みの砂糖):8g
- 塩:3g を加え
- サイリウムハスク(オオバコ):2g
- 植物油(太白ごま油や米油など):6g
すぐに成形して30°cで40分2次発酵して
オーブンを予熱
- 【ケトリング(ゆで用)】
- 水:1リットル
- 蜂蜜(またはモルトエキス、砂糖):大さじ1
2. 作り方(工程)解説
【前日夜】オーバーナイト水和させる
- ボウルに米粉、ぬるま湯、米麹を入れ、ゴムベラでダマがなくなるまで滑らかに混ぜます。
- ラップをピッチリと表面に密着させて貼り付け(乾燥防止)、そのまま冷蔵庫で一晩(8〜12時間)休ませます。
- ※この間に米粉への極限吸水と、麹によるほんのり優しいタンパク質ほぐしが進みます
【翌朝】本捏ね
- 冷蔵庫からボウルを取り出し、きび砂糖、塩、ドライイーストを加えます。
- 生地が硬いのでゴムベラで手混ぜでまぜました
- サイリウムハスクを一気に加え、すぐにゴムベラで混ぜ合わせます。
- ※サイリウムが水分を吸って一気にまとまり、モチモチの粘性ポリマー網目が形成されます。
- 2分ほどサイリウムが全体にいきわたるまで捏ね、ひとまとめにします。
- 油を入れ更に生地に揉みこむようにゴムベラでまぜる
分割➔成形 ➔ 発酵(約40分)
- 生地を4等分(1個あたり約95g〜100g)に分割し、
- めん棒で長方形(厚さ5mm程度)に伸ばし、端からクルクルと巻き込んで棒状にします。
- 棒の片端を平らに潰してスプーン状にし、もう片方の端を包み込むようにして輪っか(リング状)にします。接ぎ目をしっかり閉じます。
- オーブンを210℃に予熱し始めます。オーブンシートの上に並べ、30℃で40分~二次発酵させます。
- ※一回りふっくらすればOKです(発酵させすぎに注意)。
- 鍋に水と蜂蜜を入れ、85℃〜90℃(グラグラ沸騰させず、フチにフツフツ気泡が出る程度)に温めます。
- ケトリングします。生地を入れ、片面10秒ずつ静かにゆでます。
- すぐに網ですくって水気を切り、天板に並べます。
- 200℃のオーブンで18分〜20分、きれいな焼き色がつくまで焼き上げます。

ワンポイント
- 冷凍保存する場合 焼き上がったら網の上で冷まし、粗熱が取れてほんのり温かい(手で触れる)段階で1個ずつサランラップでピッチリ包み、金属トレイに乗せて急速冷凍してください。 食べる時は、ラップのまま電子レンジ(500W)で20〜30秒温めた後、トースターで2〜3分表面を焼き直すと、焼き立てを超えた「表面パリッ、中ムッチリ」が復活します

疑問 もっとよくするには?
米粉パンのレシピで油脂を入れるタイミングって結局どれが正解なんだろう?とよく思います
①油脂のオールインワン
②サイリウムを水と良く混ぜたあとに油を入れて混ぜ、粉類を混ぜる
③サイリウムを水と良く混ぜたあとに粉類を入れてまぜ、油を混ぜる
AIに質問してみました。どちらが翌日もふわふわ老化しにくい米粉ベーグルに適しているか?
翌日もふわふわで老化しにくい米粉ベーグルを作るのであれば、結論から申し上げて「2(サイリウム+水 → 粉類 → 油)」の順番が圧倒的に適しています。
米粉パンの老化(パサつき、硬化)を遅らせるための最大の鍵は、「デンプンにいかにたっぷりと水を吸わせ、しっかりと糊化(アルファ化)させるか」にあります。
この観点から、それぞれの工程が生地の科学的構造にどう影響するかを解説します。
比較まとめ
| 投入順序 | 粉への吸水(水和) | 糊化(アルファ化) | 翌日の状態(老化防止) | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 1(油を先に混ぜる) | 油が粉をコーティングし、吸水を阻害する | 不十分(芯が残りやすい) | 水分保持が弱く、パサつき・硬化が早い | △ |
| 2(粉を先に混ぜる) | 粉が十分に吸水し、水和が完了する なぜ「2(粉が先、油が後)」が良いのか?1. デンプンの完全な水和(吸水)を優先するためサイリウムの保水ネットワークの中に米粉(デンプン)を入れた際、デンプン粒に直接水分を行き渡らせる必要があります。ここで十分に吸水(水和)させることで、焼成時にデンプンが完全にアルファ化し、骨格が安定します。2. 油(脂質)によるコーティングの役割を最大化するため粉類が十分に水を吸った「後」に油を加えることで、吸水済みのデンプンやサイリウムのゲル状ネットワークの外側を油の被膜が覆います。これにより、生地内部の水分が蒸発するのを防ぐ「フタ」の役割を果たし、翌日以降の水分抜け(=老化・ベータ化)を強力に抑制します。「1(油が先)」にした場合のリスクサイリウムと水を混ぜた後に油を入れ、そこに粉類を加えると、投入された乾燥状態の米粉の表面を先に油がコーティングしてしまいます(油膜による撥水効果)。これにより、米粉のデンプン粒に水分が入り込むのが阻害され、吸水不足に陥ります。吸水が不十分なデンプンはオーブンの中で完全に糊化しきれず、結果として翌日になるとすぐに水分が飛び、ボロボロ・パサパサとした食感(老化現象)を引き起こします。プロとしてのベーグル製造のワンポイントベーグルはケトリング(茹で工程)を行うため、表層のデンプンを湯で糊化させてクラスト(皮)を作ります。この際、生地内部の水分がしっかりと保持されていないと、クラム(中身)が詰まりすぎて硬いだけのベーグルになりがちです。 「粉をしっかり水和させた後に油でフタをする」という2の順番を守ることで、ケトリングの熱ストレスにも耐え、翌日もクラストはむっちり、クラムはふんわりとした理想的な米粉ベーグルに仕上がります。さらに生地のpH調整(少量の食酢など)を併用されているようであれば、この順番を守ることでより生地の安定性が増すはずです。 |




コメント